1.美容院業界の現状
まず現代の理美容市場の現状を把握することは、新規参入して売り上げを出し、利益を確保するための準備のひとつとして、はじめに取り組んでいなければならないものだと考えます。
19年度の理美容市場の売上高は、前年比99.4%推移と、やや減少気味ではあるが、ほとんど維持しているという結果が出ています。しかし、美容施設が5万店ほど増えたこと、美容師数も増加傾向であることを加味すると、個店ごとの利益をベースに考えると、年々厳しくなっていることがわかります。売り上げ減少の原因としては、来店客数の減少と、再来店率の低下があげられています。
(出典:厚生労働省健康局生活衛生課 美容業)
また、美容市場の傾向を見てみると、高付加価値型サロンと低価格美容サロンの二極化が進んでいるようです。中価格帯のサロンは、技術や質は充分に保有しているにも関わらず、他の店舗との差別化や優位性を顧客に認知されていないことが多く、苦難を強いられています。
(出典:株式会社矢野経済研究所)
2.ターゲットを絞ろう
市場の概況がわかったところで、どうすれば顧客数を増やし、再来店率を高めることができるのでしょうか?
例えば、お洒落な20代〜30代がよく通うようなお店に、サラリーマンの中年男性が何度も来店してくれるかと言うと、可能性は低いと考えられます。中年男性にしてみれば、周りが若い女性だらけの場所では帰属意識が感じられず、疎外感や居心地の悪さを覚えてしまうからです。
つまり、ターゲットを明確に絞ることが大切であるのです。
美容市場をめぐる現状を踏まえた上で、どの層をターゲットとすることが今の時代に適切なのかを考えてみましょう。
例えば、わざわざ仕事の営業中に美容院に行く人はなかなかいませんので、自由に使える時間がどのように変化しているかを調べることで、現代人のニーズに気づくことができます。
おそらく、多くの人が時間に追われていて自由に使える時間が減っているのではないかと予測するかもしれません。しかし実は、その反対なのです。1,200人を対象にしたアンケート結果では、「時間に追われていると感じますか?」という質問に対し、「感じる」と答えた人の割合は、2017年から比較して、2020年は10%近く減少していたのです。また、リモートワークをしている人々はオフの時間に使う金額が上昇しているという結果も出ています。つまり、仕事とそれ以外の時間が曖昧になりつつある現代において、しっかりとしたオフタイムに価値を求め、多くの金額を支払う意思があることを示しているのです。
(出典:SEIKO時間白書2020)
つまり、自分で仕事の時間をコントロールしながら、オフの時間をいかに高付加価値にするかに重点を置いているのです。
3.ペルソナマーケティング
続いて、想定する利用客を細かく設定してみることでさらに具体的な血肉ある姿を思い描くことができ、それは美容室の設計や、デザインをより詳細に考えることに繋がります。年齢、性別、仕事、所得、行動特性などを想定してみましょう。このように、特定の人物像を描いて考えることを、ペルソナマーケティングと言います。
このように、現代の美容室市場と現代人のニーズを鑑みた上で特定のターゲットを描くことで、より具体的な設計案につなげることができるのです。続いて、さきほど決めた特定の利用客が何を求めているのかを考えることで、店のコンセプトを決めていきましょう。
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